虹の蛇

たとえばそんな時、そんな朝、そんな夜には、大切なそれをまたひとつ、心から追い出すものだ。
いつでもどこにでもある、向き合う振りをしたそれを、大切さを見せつけるばかりのそれを。
いつでもどこにでも、いくらでも。悲しみとは、さよならをなぞる前の道筋にただ落ちている。

大切な朝も夜も本当はいくらでもあるものだが、それは驚くほど当たり前の顔で、足取り密やかに通り過ぎてゆくもので、気付いた時には静かに終わっている。
俺達は、僕たちは、わたしたちはいつでも同じことを知らない。せめて同じだけ、自分だけ、貴方だけ、そう思い願うのは手遅れの為だったろうか。

闇の泉にうち潜み、棲み家を探してさよならをしよう。
十重二十重を創造し、二千年の雨を呼んだなら、別離の虹を渡るのだ。
殺された蛇に言葉はなく、永遠の命など誰も必要としない。
同じように、そこには最初から何もなかったのだ。

都合の良い何かのために、また別の何かが奪われている。
それすらも全てが理由であり衝動である仕組みを、否が応でも飲み込んでいる。
この世界こそが、途轍もない蛇の模倣だ。

雨の向こうにかかる虹を、見たいと願うあなたに愛を。
始まりの夜は迫っている。

ここからの一年間の核、幕開けに向かって夜は深い。